上って下るー反転する社会

8月に東京・大手町で開催されたサマーカレッジ(https://ecozzeria.jp/events/special/sc2020.html)で高校生・大学生向けにキャリアと家庭(子育て)のお話をさせていただきました。先日、その参加者アンケートを拝見したところ、「年長者に対する違和感の理由がわかりました」という声が多かったので、いったい何を話したのかを書いてみることにしました。

 

サマーカレッジで依頼されたトークは「働きながら子育てする母」としてのお話、ということで、①自分はどのようにキャリアを築いてきたか、②自分の仕事(業界)、③働きながらの子育て、という3つの視点から、ざっと以下のようなお話をしました。

 

①学部(文学部哲学科)を卒業し、農学部の大学院で修士を取得、就職して意に反して特許課に配属。特許の仕事は好きでもないが、得意だと気づいたのでその道で生きてきた。途中、何度か転職し、対外活動もした。一貫性があるようにもないようにもみえるが、「今しかできないことは何か」「いま、すべきだと思うことは?」を自分に問い、「今しかできないこと」をやるようにした結果であり、自分としては考えた末だけれど、結果として行き当たりばったりの出たとこ勝負の連続となった。

 

②新事業創造を知財面からサポートする仕事をしてきた。バブル崩壊後、30年に渡って続いている日本経済の低迷の中で、ずっと「イノベーションが必要」と言われ、様々な施策、取組がされてきたが、世界レベルで見れば明確な成果は出せていない。「イノベーションを興せ」「新事業を創造しろ」という大人は多いが、彼らが55歳以上であるなら、彼らは30年、成果を出せていない。そもそもイノベーション」とは、「いまある社会」役に立つ、必要とされるものではなく、「いまある社会とは違う未来の社会」で必要とされ、役に立つ技術やサービスであるので、「今すぐ儲かる」わけではない

にもかかわらず、「イノベーション」をやれ、と言いつつ「5~10年以内に儲かるのか」などと聞く大人は少なくない。「今すぐ儲かる新商品・サービス」は、30年、失敗し続けてきた55歳以上がリベンジとしてやればよいのであり、そういう大人にあなた方(高校生や大学生)が「やって」と言われても、言うことを聞く必要はない。

つまり、大人の要請、社会の要請には、身勝手なものだってあるのであり、何でもかんでも素直に受け入れる必要はない。

 

③仕事も結婚も、「どこで何をするか」「なぜ誰とするか」は、自分で考え、自分の好み、責任で決めてきたから、ある意味、悩みもなく満足感も高かった。けれども、「子ども」というのは自分とは異なる好み、考えを持ち、自分と違う環境を生きていく「他人」。だから、私にとってベストな判断、選択が、子どもにとって「いい」とは限らない。そうして、親として「こうした方がいいのでは」という考えと、子どもの好みとが一致しない中でいろいろ、判断、選択しないといけないので、いつも「これでいいのか」と悩み、考えさせられる。

 

②の中では、下図を示して55歳以上の人たちと30歳以下の人たちとが生まれ育ち生きていく状況が違い、生まれ育った環境が違うから、考え方・価値観が異なることも話しました。

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日本の人口

 

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先日、拝見したアンケートには、「子どもは他人」と言い切ったことへの驚きや「(子育てで)キャリアを中断しても、別の世界を知ることで成長できると知りました」といったものも多くありました。その中でも最も多かった感想が「中高年に対して抱いていた価値観の違いは、生まれ育った環境の違いによるものと分かったので、これからはそういった違いがあることを前提に話をしてみようと思いました」というもの。

 

使用した図は年配の方が見ていた研修でも使ったことがあり、その時も「図で違いが示されたので説得力があったし、納得した」という感想を頂きました。

その時の経験と、今回の経験を通し、こうした違いがあることが社会全体として明確に認識、共有されないままに老若が対立してしまうのは残念だと思ったし、環境が違うのだから考え方は違って当然、と知れば老若はもっと互いを理解し、共に生きていけるだろな・・・そう思い、ブログで公開してみました。

 

ちなみに、サマーカレッジのレポートは近々、公開される予定です。

さすがはプロ!口の悪い私の話を上品に、マイルドに説明されています(笑)。ご興味ある方はレポートが公開されたらご覧くださいませ。